■アナリスト・レポートの取り扱い
アナリスト・レポートの取り扱いに関しては、会員(証券会社)が遵守すべき事項を定めることにより、アナリスト・レポートの作成・使用に関わる業務が、適正かつ公正に遂行されることを図り、投資家に対する適正かつ有効な情報提供およびアナリストの資質の向上に資することを目的としています。
■アナリスト・レポート作成上の注意
・アナリスト・レポートの文章中「抜群」「超格安」「最も注目される」などの不適切かつ過度な形容詞を使用しないこと。
・増資期間中の銘柄のレポート作成や参考銘柄一覧への採用は避ける。
なお増資期間とは増資決議の翌日から払込日までを指します。
・単純なミスの撲滅、例として社名、コード番号、上場市場、決算期などの間違いなどを犯してはなりません。
・株価レーティングを実施した場合、レーティングの根拠を説明すること。レーティングを変更する場合にも同様の説明が必要になります。
■証券アナリストの社外活動と対顧客交流に関するガイドライン
アナリストの社外活動と対顧客交流に関するガイドラインは、
・アナリストにテレビ、ラジオ、業界紙誌、一般紙誌への出演・出稿に関しては、企業調査部長および役員に事前申請し、許可を受けなければならなりません。
・アルコールが出ない朝食会と昼食会を除き、担当会社および機関投資家にアナリストが単独で招待される会食は行ってはなりません。
・工場見学や地方出張時においても、過度な接待は受けてはなりません。
・会食は一次会までとし、二次会には行かないことを心がけましょう。
やむを得ず二次会に行った場合には、相手と割り勘にするか個人で費用を払うようにします。
・担当会社が旅費などの費用を負担する工場見学は避けて、交通費および宿泊代は通常の出張と同様の扱いとします。
■証券アナリストの重要な禁止事項
証券アナリストの重要な禁止事項については、
・有価証券などの価格の騰落について、断定的判断をしてはならない。
・特定かつ少数の銘柄について、不特定かつ多数の顧客に対し、一定期間継続して過度に売買を勧誘し、公正な株価形成を損なう恐れがある行為をしてはなりません。
・虚偽の表示や、重要な事項について誤解を生じる表現をしてはなりません。
・顧客の売買取引や名義書換に際し、自己や親族などの自己と特別な関係にある者の名義、または住所を使用してはなりません。
・職務上知りえた企業機密を他に漏洩することをしてはなりません。
・企業調査部長、または役員の承認を得ずに有価証券を売買すること、また、承認を得て有価証券を買いつけた場合は、原則6ヶ月以上の保有と本人名義への書き換え、原則保護預りとするルールを遵守しなければなりません。
■インサイダー取引の禁止
担当会社などの業務に関する「重要事実」の取り扱いには厳重に注意しなければならない。
しかし、重要事実が2つ以上の総合報道機関によって公開され、かつ事実を周知するために公開後12時間経過するか、または有価証券報告書などで公衆閲覧されたのちはインサイダー情報ではなくなります。
■証券アナリストに要求される倫理観
証券アナリストに要求される倫理観においては、仕事を始める前に、「従業員持ち株」以外の保有株式は損得を考慮せずに、すべて手放すほうが良いでしょう。
保有し続けると「客観的なアドバイスやカウンセリング」ができないと判断されてしまう可能性もあるかもしれません。
重要なことは、アナリストの倫理観は宗教や道徳によって涵養されると考えるのは無理であり、証券会社やグループ研究所との「調査委託/受託の契約原理」に基づき、善良な第三者に対し、本人と同等の努力と注意を払って代行行為を行うことが、アナリストの仕事であるとの認識が、倫理観の本質にならなければならないでしょう。
■証券アナリストとしてのモラルその他の留意点
・業績見通しの変更や株価レーティングの変更をレポートで行わず、事前に社内外に「今後見通しやレーティングを変更します」という風な情報提供は禁止行為とします。
・検定アナリスト資格を保有していなくともレポートを書くことは可能ですが、資格を持つことはアナリストの信頼性を高めることにつながるので、会社としては資格取得を支援することになるでしょう。
・アナリストは、引受け業務と流通市場業務の垣根(チャイニーズ・ウォール)を常に意識しなくてはなりません。
垣根を越えて引受け業務に深く関与した途端に「インサイダー」とみなされるリスクがあるため、両業務の指揮命令系統などを明確化し情報の取り扱いには十分に配慮を怠ってはなりません。
・既上場のレポートに関して、執筆、内容説明、顧客への推奨行為などに注意を怠らないことは当然ですが、特に未公開企業の情報には細心の注意を必要とします。
それらの企業の資料およびレポートは、施錠するなどして厳重に分別管理する必要があります。
・アナリストが新規上場前の時点で会社を訪問する際には、実態的には主幹事を含む販売団の一員としての事前調査という意味合いがあり、会社訪問で入手した情報は社内限りとし、それを公表してはなりません。